今から1500年位前の奈良時代に蒔絵は発祥したと思われます。
もちろん大陸から献上品などで伝わった可能性があります。
正倉院の宝物を見れば、奈良時代の蒔絵が数点確認できます。
その後、都が京都に移って、貴族たちの間で流行します。
平安時代には既に高度な『研出蒔絵』が完成している点が私には驚きです。
これが蒔絵の原点だと思います。
蒔絵は『晴』のもので、道具などを華々しく飾ります。
世界各地には、人類の憧れである『黄金』を使った文化が沢山あります。
日本では『黄金』を『漆』を使って接着させました。
ただ接着させたのではありません。
接着剤として『漆』を筆に付け文様を描いたのです。
そして、『黄金』をより細密に表現するために粉末に加工した訳です。
この筆と、粉に加工された金を接着させるところが日本的細やかな表現だと思います。
こうして『黄金』と『漆』の艶が相まって、見事な『蒔絵』が出来上がったのです。
その艶やかさは、貴族社会や武家社会の好みと一致した事も受け継がれ進化し続けた要素となりました。
1500年もの間、日本において育み続けられて来た訳です。
中には琳派などの大家も好んで取り入れ、日本を代表する工芸となりました。
日本人特有の手先の器用さと集中力の素晴らしさが見事に調和された漆工芸蒔絵は
見ていて飽きのこない美しい世界があります。
人の心に『晴』をもたらす、日本を代表する文化だと思います。
皆様にその一端を愉しんで頂ければ幸いです。
私は生涯をとおして蒔絵を愉しみたいと思っています。
松田祥幹
追伸
手先が器用だと細密な表現が出来ますし、
自分は不器用だと思っている方は、繊細さより勢いや大らかさ、大胆さがあります。
私はないものねだりで、この大胆さに憧れます。